大郷の曲り家

計画概要

計画年:2011年~2013年7月竣工
場所:宮城県黒川郡
用途地域:指定なし
建蔽率/容積率:15.56%(70%)/15.56%(200%)
防火指定:指定なし(法22条指定区域)
工事種別:新築
用途:専用住宅(災害復興住宅自力建設)
敷地面積:483.19平米
建築面積:75.2平米
延床面積:75.2平米
構造:木造軸組工法
基礎:ベタ基礎
階数:地上1階
最高高さ:4.94m

基本設計期間:2011年9月中旬~2012年3月
実施設計期間:2012年3月~2013年2月
設計・工事監理:前見建築計画 前見文徳
協力:有限会社大賀建築構造設計事務所 大賀成典
施工:若生工務店 若生豊
薪ストーブ工事:株式会社ぜいたく屋 鷹觜順一
石工事:有限会社上東石材
建築確認審査:ビューロベリタスジャパン株式会社
中間・完了検査:仙台土木事務所
撮影:前見文徳、西川公朗

田園に佇む初老の夫婦のための木造平屋建ての住まいです。敷地は盛土の三角地の分譲地で、周囲は濠のように法面があるため、建設可能な平場は1/3程度にまで減ることがわかりました。その限られた不整形なエリアに「移動する距離を増やすように」LDKと主寝室が納められた馬蹄形のワンルームを据え、ゲストルームのハナレを設けました。 外壁は周囲の景観に馴染む色合いとし、室内は杉板の天井とミズメザクラの無垢フローリングとしています。白い壁面によく映え、のびやかでぬくもりのある空間が実現しました。 防災面、メンテナンス面などの機能的側面から、天井・天井内には設備を一切設けず、床下から壁内の範囲でエネルギー供給をするように計画されています。 空間的側面においては、真っ白な壁や天井だけでつくられる空間は実際冷たい印象を与えてしまうため、木質の床と天井や、暖色の照明を用いて白にあたたかな色調を与えています。空間が間延びしないよう、しかし広がりを感じられるような計画となっています。 基礎コンクリート工事費が震災以後高騰した中で、全体のコストバランスを保つことはとても難しい課題でした。馬蹄形平面を曲面ではなく多面体としたのは、地元業者の施工性・工期、曲面によるコストアップを避けることを考慮したもので、その結果、構造用合板を真物で割付しやすい一間モジュールを外周の一辺(柱間)として採用しました。 LDKを納めたワンルームは、この折れた壁面によって各領域がゆるやかに分節され、ある場所では室内全体を見通せる場所になったり互いの距離感を保てる隠れ家のようになったりと、わずかな移動で内外の風景が劇的に変化する体験ができます。 薪ストーブの要望から、大谷石でつくった炉台・炉壁の蓄熱も積極的に利用し、床下を通して全体に誘引させています。東北地方の伝統民家である南部曲り家が台所の窯の排熱でハナレの厩を温めたように、この住まいもハナレまで循環させる仕組みが施されているエネルギーロスの少ない住まいです。